荒木さんとの長いつき合いの中から、面白いことを思いつきました。確か1999年頃のこと。当時から世間はキャラクターグッズなんかが流行っていて、私もささやかながらマンガを描いていて、自分のキャラクターをマンガにしていました。今現在も使っている「なめだるま親方」のキャラです。
真面目な人や若い人、女性はご存知無いかも知れません。ふざけたスケベなオヤジなら知っているかも? そんなわけで、荒木さんのキャラを作りたくなったのです。
といって、もぉ充分荒木さんはアラーキーとしてのキャラ立ちしまくってますから、似顔絵そのままでいいわけですが、それじゃあまりにも芸がないってんで、荒木さんを猫にしちゃって、可愛くしちゃうのがいいかなと、思っちゃったわけです。
でまぁ、何種類か猫の荒木さんを描いて見てもらったんですが、荒木さんはその絵を見て、「オマエ、俺の顔を評論してんのかぁ?」と怒られました。でも中でもそこそこ愛嬌のある顔を選んでいただき、じゃあそれでいきましょうとなったわけです。
これは楽しいぞと、私は事務所に戻りスタッフに見せたらみんな喜んでくれて、さて名前をどうするかとなりました。荒木猫、いやそれじゃあねえ、と考えあぐねていた時、スタッフの中の薬師寺君が「にゃらぁきぃー」でいいんじゃないかと言ってくれ、オッそれだねと即決。荒木さんに伝えると、「しょうがねぇなぁ~」といった返事で決定しました。
さて、キャラクターグッズは何を作ろうかとワクワクしながら小躍りしていて、ハタと気がつきました。私の古い友人関係の中に、それ専門にお仕事されてる人がいたんです。池袋にあるデザイン会社の社長で、イケメンオヤジのAさん。いい人を思い出しました。
早速電話を入れて、私、池袋へ直行して私が描いたキャラ、「にゃらぁきぃ~」をお見せすると、「これは面白いねぇ!」とノリノリで、「うちで作ってあげるよぉ」というわけで、プロにお任せすることになりました。グッズの種類は、当時の携帯電話に付けるストラップからバッヂ、ヌイグルミからポストカード、脂取り紙までありましたか。
私が絵本も出したいと言うと、それも出して頂きました。荒木さんも面白がってくれてその絵本の内容と同じ短編のアニメまで作ってくれました。
当然のこと権利関係の契約書も交わし、冗談のような思いつきが、ちょいとしたお仕事にもなったんです。今でも荒木さんの写真の中に、そのキャラがチラッと登場することがあります。楽しかったですねぇ。いやいや、今でも私の事務所の棚には絵本の在庫が少し残ってます。お宝として大事に仕舞ってあります。
ところで「にゃらきぃ~」のキャラは、首に赤いマフラーをしています。そう、荒木さんの奥様陽子さんの葬儀の後、酒席に登場した荒木さんがその赤いマフラーを巻いていたのが、私の目に焼き付いていたからです。
ちなみにグッズ類を販売したのは、木場にある東京都現代美術館(現在リニューアル改装中)で開催された、荒木さんの大規模な展覧会でのミュージアムショップでした。そこには巨大な「にゃらぁーきぃ~」のヌイグルミがドーンと飾られ、すべてのグッズが販売されました。当然のこと、写真集も並んでいます。でもお客さんは面白がってくれて、グッズ類は飛ぶように売れたのです。