人間劇場とは

反常識的なもの、よけいなもの、風変わりなもの、猥雑なものへの賛歌

ようこそ、人間劇場へ。

当サイトが扱う主題は、ずばり「人間」です。

とはいっても、このサイトのコンテンツには、立派な人の話、健全な人の話、格調高い批評、あるいは美しい動画や画像はあまり出てきません。

というわけで、ご自分を「正しく真っ当な人間」だと思われている方にとっては、不愉快千万なテキストや動画、画像だらけなのかもしれません。

ご容赦ください。

私どものコンセプトは、人間の弱さや愚かしさ、劣情や奇妙なものへの偏愛といったものへの全肯定であり、とりわけエロいものには力を入れたいと思います。

カトリックでは人間の七つの罪、すなわち「暴食」、「色欲」、「強欲」、「憤怒」、「怠惰」、「傲慢」、「嫉妬」を固く戒めていますが、そんな戒めは『人間劇場』にとって「屁のツッパリ」にもなりません。あっ、品のない表現で申し訳ありません。

当サイトにたどり着かれたのも何かのご縁、ともあれ一度覗いてみてください。

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人間劇場
根本敬のあすなろ物語

第2回:反権力、反体制、反米の男、瀬川君

瀬川君の、んまぁその体よく言えばアイデンティティというのか、それには「僕は固定電話はもとより携帯電話すら持たずに公衆電話を使う」というのがある。やってることはともかく、自己イメージ「反権力」「反体制」の彼だ、世の趨勢と「戦い続ける」とのこと。その中枢をなすのだ、このことは。

 

ちなみ名刺には住所の横に電話番号はなくFAX番号のみ記されているが、それは自宅ではなく近所のコンビニのものである。

 

公衆電話からの着信はまず99%瀬川君からの執拗な長電話だから我々の周辺では皆出ない。無論私も大抵鳴り止むのを待つ。

 

が、たまに出てやり、初めはどうでもいい近況、やがて同じ話の繰り返しになりこちらも辟易として切ろうとすると、それを感知するや瀬川君は間髪入れず「あ! センズリが!!」とその話題でこちらの気を引きにかかる。

するとこちらもつい聞いてしまう。

 

前回、大谷翔平でセンズリをかこうかかくまいか悩み相談を受けたと書いたが、その後どうやら吹っ切れて遂に大谷で抜いたようである。「まさか自分が男に対してもその気があるとは思わなかった」というので「瀬川君も今年還暦でしょ、もう何しても許されるよ、幼児や女子のレイプ以外」と言ってやると「女子供にそんなことはしないけど、男ならいいわけだから、今度ハッテンバいってみようかな」

と言うので「是非是非、報告待ってます!」とだけ早口で言ってあの「あ、センズリ」が出ぬうちに電話を切った。

 

瀬川君は小柄で温厚だが、しかしトラブルは絶えない。もちらん当然彼は「反米」なである。が、30年前に「彼女」と不本意ながらあのいまわしきディズニーランドへ行くはめになり、内心苛つきながら入場した瀬川君。

早速、ディズニーランドのシンボル着ぐるみのミッキーマウスが「ようこそ」と握手を求めて来た。

瀬川君は咄嗟に、しかし思い切りミッキーの手をたたきつけ「バカヤロー」の怒声と共に払い除けた。

すると(今なら中のバイトもしっかり教育されこういうことはないと思うが)、なんと着ぐるみのマッキーマウスが「なんだよてめえ」と応酬。瀬川君につっかかって来た。やがて揉み合いとなり、両者は殴り合いのあげく地べたに転げまわり、たちまち人だかりができたという。

 

結局この一件で彼女にも振られた瀬川君は、より頑なな「反米主義者」となり米国帝國主義っていうんですか? その象徴であるとディズニーを、ミッキーマウスを激しく憎悪する。

 

ある時。瀬川君が急用で飛行機に乗ろうとしたら機体にミッキーをはじめディズニーのキャラが描かれていた。

ひと目見た瞬間、彼は愕然とした。しかし、急いで目的地へ向かわねばならない。

搭乗はとりあえずした。大荷物をかかえ、汗だくでギリギリで乗り込んで来た瀬川君を皆さん関わりたくないヒトと一瞥

目を背けたかと察する。瀬川君、乗客の視線は気にならないが、自分がディズニーキャラの機体に、その中にいるという状況が我慢ならず、ついに客室乗務員の一人を呼びとめ議論をおっぱじめた。瀬川君は客室乗務員たちを相手に揉めにもめ、飛行機の出発時間を30分以上遅らせた。そんなこともあった。

忘れられないエピソードをもうひとつ。90年代末のある時S警察署の留置場から瀬川君より手紙が届いた。

何でも「理不尽な目に遭い、今囚われの身となっています。つきましては保釈金の30万円を貸して貰えませんか? 絶対に娑婆へ出たらバイトをしてお返しします」そんな内容だった。

 

貸す金はないが差し入れを持ってS警察に瀬川君を訪ねた。

聞けば、S大学のトイレでウンコをして出て来たところを警察が待ち構えていて連行されたという。

こんな理不尽なことがあっていいのかと悲嘆にくれる瀬川君だが、思うに学生でもないことは明白、かといって教授や、事務職でもないのは身なりからも不審な挙動からも明らかだ。S大学に連日居座りコピー、図書館、学食と好き放題に振る舞い、かつそれはまわりが迷惑する程に度を越していたことからマークされていたのだろう。まあ本人にそういった自覚はないのだが……。

それにしても、留置されてる身でありながら自分の「人権」及びその「侵害」をいちいち若い警務官に画数の多い法律用語をいちいち浴びせて執拗に楯突くのだが、ふと警察官の顔を覗くと、当時アメリカンドリームをものにしたドジャースの野茂英雄にそっくりだった。ならばこの反抗的な態度もミッキーマウス問題同様に反米なのだろうか。

 

だとすれば、あれから20年同じくアメリカンドリームのさなかにいる大谷をズリネタにする現在の瀬川君の内なる「反米」は融和されたのだろうか。

 

「時代はかわる」とは、瀬川君がなりきりセンズリの時に扮するボブ・ディランの曲名だが、瀬川君のセンズリ人生ないしセンズリ人生感も、加齢とともに変化するのだろうか。

 

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