夕方から小雨の降る蒸し暑い夜だった。
傘をさす程でもなく、小走りに駐車場の車に向かった。
二階立ての立体駐車場の階段を上り、いつもの場所に停めてある車に乗り込み、
後部座席の見慣れた鞄を見つけてエンジンをかけた。
ガラガラと金属音を響かせながら車は地上へ降りて行く。
浩二は煙草に火をつけ、ナビゲーションの地図を眺めながら行き先を考えた。
濡れた路面はヘッドライトを乱反射し、寂しげなロードノイズが車内に響く。
一時間も経たないうちにその場所に着いた。山を削った新興住宅街のはずれだった。
これから建てられる家を待っているかのように、整然と配置された区画と道路、 そしていくつかの完成した家から灯かりが漏れている。
浩二は車から降りると、後ろに回って1BOXの後部ドアを開けた。
そこには女が横たわっていた。女は全裸で口にはギャグがはめられており、 手は手錠で後ろにまとめられていた。浩二は女の髪を掴み引き起こした。
女の不自由な口から「うぅ……」と声が漏れた。
浩二はつかんだ髪を引き寄せ、女の顔を自分の目の前へ引き寄せ、いつもの言葉を吐き捨てた。
「豚野郎っ」
豚という言葉に相応しくない白くスレンダーで豊満な女体がそこにはあった。
浩二は女の手錠を解き、少し強く降り出した雨で濡れるアスファルトに 引きずり出した。いつもならば女の首輪のリードを引いて散歩を始めるのだが、 雨足が強まった今夜は女に任せる事にした。
「今日は一人でまわるんだな」
四つん這いで待っている女にそう言い聞かせて、浩二は運転席に戻った。
雨に打たれてびしょ濡れの女がのろのろと車の横を這って行くのが見えた。
真新しい濡れたアスファルトの道を女はゆっくりと這い進んでいた。
車の横を通り過ぎ、やがて車の前方に差しかかった頃、浩二はヘッドライトを 点けた。女の惨めな格好が暗闇の中に浮かび上がった。それでも女は歩みを 停めず、のろのろと這い進んでいった。その後姿には性器を貫通したピアスに ぶら下げられた南京錠が光っていた。
やがて女の進路は右にそれ、浩二はヘッドライトを落とした。
煙草に火をつけ、微かに流れるCDを聞きながら、この暗闇には明るすぎる ナビゲーションのモニターを消した。
暫くすると女が車の横に戻ってきた。十分も経っただろうか。
浩二は運転席から降りると女の髪を引き、近くの電柱に連れて行った。
女は電柱を背中で抱えるように両手を手錠で後ろにつながれた。
性器と同じように、乳首を貫いたピアスには南京錠がぶら下がっていた。
「誰かに見つかったら言い訳できるようにギャグははずしてやるよ」
浩二は女の顎を掴んで顔を覗き込んだ。そしてズボンを下ろすと、女の 口へ小便を注ぎ込んだ。その惨めな顔に容赦なくデジカメのフラッシュが光る。
口から小便が溢れる顔、そして頭へと移動しながら、カメラは女を記録していった。
「気が向いたら迎えにきてやるよ」
そう言い残して浩二は女を置いて車を出した。
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